『……なん、で』
この距離で気付かれるなんて有り得ない
私達が来ることは知らされていないはず
幹部が電話線を操作して…連絡出来ない様にしたんだから
なのに……何で……
女は内心焦りながら考えを巡らす
『悪いけどさぁ…俺もそんなに暇じゃないんだよねぇ。夜魅待たせてんの。だから…さっさと何処の誰だか吐いて、早く』
蒼夜が笑顔を絶やさないまま言葉を吐き捨てた
いつもより1トーン低い蒼夜の声に女は少しだけ恐怖を感じる
『愛華、下がって』
恐怖で動けないでいる女の腕を引っ張って男は背中に女を隠した
その口調は先ほどの男の様子とは異なっている
『……人事異動で戦力として配属された槙[まき]だ。こっちは愛華[あいか]』
『…人事異動?聞いてないな』
『……幹部が電話線をいじってお前らに連絡出来ない様にしてるからな』
『ふ〜ん……なるほどね』
蒼夜の鋭い視線に槙は冷や汗を流す



