あぁ…だからさっき奥の部屋から出てきたのか……
なんだ…ちゃんと仕事してるんじゃん
リクさんが考え込むのを止め、真っ直ぐに私を見下ろす
『…リクさん?』
『……夜魅。気をつけろ……まだ上の奴に報告してないから何とも言えないが……嵐が来る』
『………嵐?』
リクさんの言葉に蒼夜が少し息を呑んだが、リクさんを見上げていた私には気づかなかった
嵐が何を意味するのか分からないが、……何だか凄く嫌な予感がする
私は振り返って蒼夜を見上げた
『……大丈夫だろ。嵐なんて来させないから』
お得意のニッコリとした蒼夜の笑顔に不安だった心が落ち付いたのは……言わないでおこう
『じゃあ……上に報告しに行ってくるわ……あーぁ、仕事増えたなぁ』
面倒臭さそうに頭をかくリクさんは私たちに別れを告げて去って行った
私たちも歩きだす
『リクさん…上に何を報告するんだろうね?』
『…………。』
『………?蒼夜?』
隣で反応を示さない蒼夜に私は首を傾げる
再び蒼夜に声をかけようとした瞬間、手を取られ、スタスタと速足で歩く蒼夜……
……何なんだ一体
先を歩く蒼夜に手を繋がれ、蒼夜の顔色をうかがう事も出来なくなった
「どうかしたのか」と声をかけることも、繋がれた手を振り払う事も………
今の私にはこの雰囲気のおかげで出来なかった



