「つーかおまえ、さっきから全然進んでねぇじゃん」
「う。だ、だって、問題難しくて……」
いまやってるのは、中間考査に向けての数学の勉強。
あたしは数学がいちばん苦手。
連立方程式とか、意味わかんない!
2列にするような式、日常生活で使わないし!
xとかyとか、なんでabcdすっ飛ばして出てくるのか意味不明だし!
そう言って頭をかかえると、ため息が降ってきた。
「ったく、しょーがねぇな。どこだよ」
「……ここ」
「どれどれ。んー……?」
あたしの教科書をのぞきこんでくるるいちに、ちょっとどきっとした。
男のくせに、髪からシャンプーの良い匂いがしたから。
さっきは性格悪いとか、イジワルとか散々言ったけど、
実は面倒見がよくて、優しいところもあるんだよね。
こうしてなんだかんだ、あたしに勉強教えてくれるし……
「アホか! これさっき俺が教えてやったばっかだろーが!」
「あいたっ!」
教科書の角で、頭を叩かれた。
前言撤回!
やっぱりるいちは、性格が悪くてイジワルな悪魔だ!
いつか祓ってやるー!


