買い物に出ていたお母さんに、『ちょっと遅くなる』って書置きして、家を出た。
家から少し離れたところに停まっていた、黒いセダンに近づくと、
運転席から日下先生が出てきた。
「……似合うな」
着替えてきたあたしを見て、先生が微笑みながらそう言う。
照れくさくて、あたしはうつむいた。
学校で、夕食に誘われたけど、あたしは1度断った。
だってもう決心していたし、
教師と生徒が2人きりで食事なんて、見られたら絶対まずいことになるじゃん。
でも強引な先生に車の乗せられて、仕方なく家に寄ってもらって、着替えたんだ。
誕生日プレゼントに、芽衣子がくれた服。
それはあたしには少し大人っぽい、黒のワンピースだった。


