ぽろりと、涙がこぼれた。

静かに頬を伝っていく雫。


それを日下先生が、ハッとしたように目で追うのがわかった。




深く息を吸って、吐き出す。


落ちつこう。

あたしはここに、喧嘩しに来たんじゃないんだよ。




「……日下先生、言ってたよね。幼なじみが死んだのは自分のせいだって。ずっと後悔してるんだよね」


「……ああ」


「じゃあさ、このまま皐月さんを突き離したら、後悔しない?
いちばん傍にいる人を大切にできなかったら、また後悔するんじゃないの?」




日下先生の、綺麗なアーモンドアイが揺れる。



あたしたちは、いま同じ場所に立ってるんだね。


過去といまの真ん中で、立ち尽くしてる。

どこに向かえば良いのか、わからずに。




でもさ、あたし気づいたんだ。


気づいちゃったんだよ。