「清春」
「なに? 通報する?」
「そうじゃなくて。あの人、知ってる人だ」
「は? ……また前世の知り合いとか?」
清春の声のトーンがあからさまに下がる。
それに苦笑いしながら、首を振った。
「ううん。知り合いの、知り合い。ごめん、先に帰ってて」
「いいけど……」
「遅くはならないからさ」
清春はものすごく面白くなさそうな顔をしてたけど、うなずいて先に帰っていった。
それを見送ってから、あたしはゆっくりと、門の前をうろうろしている彼女に、近づいていく。
そう、日下先生の恋人に。
「……あのう」
おそるおそる声をかけた瞬間、彼女は勢いよくこっちを振り返った。
すぐに焦ったような顔をして、後ずさりする。
「ち、違います! 怪しい者じゃなくって、たまたま通りかかっただけで……」
「日下先生、呼んできましょうか?」
「……えっ?」
女の人はまじまじとあたしを見た。
この間ちょっと会っただけだから、覚えてるわけないよね。
そう思ったけど、彼女はあたしを、覚えていた。
「もしかしてあなた……この間、琉一の家の近くで会った子?」


