「もー。清春はわけわかんない。せっかくなんだから、深田くんを応援しようよ」
「なんで俺がアイツを……ん?」
歩きながら、なぜか清春があたしの肩口に顔を近づけてきた。
スンスンと、匂いを嗅いでるみたい。
「な、なに? 汗臭い?」
いまは少し涼しいけど、昼間はかなり暑かったもんなあ。
一応シャワー浴びてきたんだけど、また汗かいちゃったかな。
「いや。……凛、俺があげた香水つけてる?」
「え? ああ、うん。でも、足元だよ? お母さんが、足元につけるといいって」
「足元? だからちょっとだけ香りがするのか。いいね。凛に合ってるよ」
満足そうに、清春は笑った。
なんだか機嫌も直ったみたい。
あの誕生日に清春がくれたプレゼントが、この香水だったんだ。
柑橘系で爽やかだけど、ちょっぴり甘い香り。
清春が香水を選ぶなんて、信じられなかった。
だって、いままではぬいぐるみとか、ゲームとか、子どもっぽいプレゼントばっかりだったんだもん。
それが香水なんて大人アイテムを、清春からもらう日が来るなんて。
「でも、なんで香水だったの?」
「ん? マーキング」
「マーキング? って、どういう意味だっけ?」
「……帰ったら辞書で調べるといいよ」
呆れたように言われてムカついた。
ふん、なにさ!
別に教えてくれたっていいじゃん!


