「ん……」
先生が小さくうめいて、みじろぎする。
起きるかなってドキドキしたけど、目を開ける様子はなかった。
せっかくだから、真正面に立って、じっくりと整った顔を眺めることにした。
削げた頬、男っぽい骨ばった輪郭。
あの『るいち』が、大人っぽくなった
寝顔があどけなくて、28才には見えないね。
普段ふてぶてしいのに、寝てる時は可愛いのは、昔と変わらないんだ。
それとこの、左目下の泣きぼくろもね。
「るいち……」
そっと、泣きぼくろに触れかけた時。
昔の面影を残すアーモンド型の瞳が、あたしを映した。
驚く暇もなく、長い腕が伸びてきて、
強く、抱き寄せられていた。
もう逃がさないとでも、言うように。
「……リン?」
いつもより少しかすれた声に呼ばれて、全身が震えた。
あたしが昔のあだ名で呼んだの、聞こえちゃったの?
それともただ、寝ぼけてるの?
あたしは、この両手で、抱きしめ返してもいいの……?


