「……わかったよ。じゃあ昼休み、今日配ったプリント、回収して持ってきてくれ。それなら問題ないだろう」




問題は、ないよね。

でも清春は不満そうな顔をする。


あたしの腕をつかむ力が、一層強まった。


清春はどうしても、あたしと日下先生を、近づけたくないんだ。

あたしが、『柏木リン』になっちゃうんじゃないかって、思ってるのかもしれない。



日下先生を想うあたしは、事実『柏木リン』に近い。




「……あの、日下先生」


「なんだ?」


「その、あたし……教科係、辞めたいです」




ぼそりと呟いた途端、先生も清春も、驚いたのがわかった。


あたしも、自分で言って驚いた。


気まずいとは、これまでも何度も思ったけど。

辞めたいなんて、思ったことなかった。




「辞めたい理由は?」


「……ただ、辞めたいんです」


「小鳥遊」




名前を呼ばれても、顔は上げられない。


だって日下先生の顔を見たら、きっと何も言えなくなる。

ダメだって言われたら、うなずいちゃうよ。




「……どうしてそこまで、俺を避ける? おまえは、顔も見たくないほど、俺が嫌いか」



微かに、先生の声が固くなった気がした。