黙って最後まで聞いていた清春は、あたしが話し終わるとひとこと、そう聞いてきた。


清春から受け取った写真を見つめる。

幸せそうな、昔の自分を。




「好き……だった」




誰にも言えなかったけど。

自分自身にすら隠していたけど。



あたしは『るいち』が好きだった。




「過去形だね。いまは?」


「いまは……先生と、生徒だし。14才も差があるし。
それに、日下先生には、恋人がいるから」


「だから?」


「だから……」




だから、なに?


いまあたしが言ったことは、好きじゃない理由にはならない。

ただの憐れな自分への、言いわけだ。




「……まあ、わかってたけどね」




黙り込んだあたしにため息をついて、清春は立ち上がる。

なんだかすごく、疲れたような背中に見えた。