「なんで、小鳥遊がここにいる」


「いや、日下これは……」


「辻。おまえが連れて来たのか? 柏木の家に、小鳥遊を? なんの為に? 中に入ったのか? 何をしていた?」




早口で質問を次々ぶつけてくる日下先生は、いつもの落ち着いた様子はまるでなくて。


その余裕のない姿に、あたしは違和感を感じた。

ここまで取り乱す彼を、見たことがなかったから。




「ちょっと落ちつけって。あたしらたまたま街で会っただけなんだよ。
ちょっと話したくなったけど、リンの家に行く用事があったから、この子に付き合ってもらっただけで……」


「ふざけるな!」




用意してあったのか、すらすら言いわけする芽衣子を、日下先生は一蹴した。


静かな住宅街に響くその怒鳴り声に、思わず体が芽衣子の背中に隠れてしまう。




「そんな理由で、赤の他人、それも中学生の小鳥遊を、柏木の家に連れて行くか?
ありえねぇだろ。もっとマシな嘘をつけ」


「……これだからあたしは日下が嫌いなんだよ」




芽衣子が疲れたようにため息をつく。

日下先生は芽衣子から、背後のあたしへと視線を移した。




「辻が本当のことを言わないなら、おまえが話せ、小鳥遊」


「さ、さっき、辻さんが言った通りで……」


「いい加減にしろ!」


「ひゃっ」




腕を掴まれて、ものすごい力で、芽衣子の後ろから引きずり出された。