そう思って、早足になりかけた時。


突然あたしたちの横に、車が急停車した。

黒く光るセダン。


驚いて思わず立ち止まったら、運転席から降りて来た人に、さらに驚くことになった。




「小鳥遊!?」




現れたのは、いま絶対に会いたくなかった、その人だった。


スーツ姿じゃなくて、いつもと雰囲気が違うけど。

でもラフな格好をした姿の方が、記憶の中の幼なじみを思い出させる。




「日下、先生……」




あまりのタイミングに、あたしは逃げることもできなくて。

ただ茫然と、こっちに向かってくる先生を見つめた。




「なんつータイミングだよ、オイ……」




隣りで芽衣子がそんな風に呟いたけど、あたしは何も返せなかった。


ただ日記の入ったバッグを、両手で強く抱きしめる。




「どういうことだ、これは」




目の前に、彼が立つ。


その声は微かに震えていて。

低く怒っているようにも聞こえたけれど、どこか戸惑ってるようにも感じた。