それからどのくらい、そうしていただろう。


不意に寂しい音色が止んで、

深田くんの手が、あたしの頬に触れてきた。




「なんで泣いてるの?」


「え……?」




泣いてる? あたしが?


気付かなかった。

本当に泣いちゃってたんだ。




「深田くんのギターの音が、なんだかちょっと悲しい音だったからだよ」


「それだけ? なんか俺、傷つけるようなこと言ったんじゃない?」


「ううん。そんなこと……」




ないよ。


そう言おうとした時、突然廊下から激しい足音が響いてきて、

勢い良く、部室のドアが開かれた。




「凛っ!!」




現れたのは、肩で息をする清春。


亀より遅い歩みの清春が、まさか全力疾走でもしてきたの?



バチリと目が合った。

いつも眠たそうに、半分くらいしか開かれてない清春の瞳が、大きく見開かれる。