低く、少し震えた、けれど強い意志のこもったような声。
でも、あたしは何を言われたのかわからなかった。
「……な、に?」
「柏木リンだろ!」
突然叫んだ芽衣子に、ハッとして、忘れていた瞬きをする。
いま、なんて言ったの?
あたしを、『柏木リン』て、言った?
「あ、あたしは、小鳥遊凛って……」
「しらばっくれんじゃねぇよ! じゃあなんでいまそんな腰抜けるほどショック受けてんだ!?」
「それは、だから、日下先生が……っ」
「あたしは『るいち』っつったんだよ! 日下とは言ってねぇっ! なんで『るいち』が日下だと思った!? 説明してみろよ!」
がくがくと体を揺さぶられて、あたしはまともに考えをめぐらせられない。
芽衣子は、なにを言ってるの?
カマをかけたってこと?
じゃあ、さっき言ったことは……?
そこでようやく、あたしは自分の犯した過ちに気づいた。


