「そうか……。なんだ。気ぃ抜けたわ」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。でもさあ、なんで昨日あの居酒屋に来たわけ? 子どものくせに、あんな変なカッコまでしてさ」
また変なカッコって言ってる。
あたしが真剣にがんばって変装した結果なのに。
「もしかしてさ。あいつのこと、好きなわけ?」
「……えっ!?」
ぎくりとして、立ち止まってしまった。
うわあ、あたしのバカ!
こんな風に動揺したら、そうだって言ってるようなものじゃん!
でも、平然と「ちがう」って言えるほど、あたしは大人じゃない。
だって、まだ14才だし。
まだ、いまだに、あたしだけが。
芽衣子は立ち止まらず、ちらりとあたしを見て、苦笑する。
「あー、やっぱりそうなの」
「ち、ちが……っ」
「だよなぁ。好きじゃなきゃ、未成年が1人であんなとこまで追いかけてかねーよな」
また前を向いて、ひとりごとみたいに言う芽衣子。
あたしは反論しようとして開いた口を、ゆっくりと閉じた。


