「あんた、名前なんだっけ?」
「へ? ああ……。小鳥遊凛です」
「リン? ……ふーん。小鳥遊凛、ね」
突然、芽衣子が立ち止まる。
こっちを振り返って、あたしを睨むように見下ろしてきた。
「小鳥遊凛。あんた、何者だ?」
しゃがれた声が、あたしを射抜く。
鋭さのある芽衣子の瞳にとらわれて、あたしは動くことも、喋ることもできなくなった。
ただ、黙って見つめ返すことしかできない。
「どうして昨日、あたしにあんなこと言った? それが聞きたくて、あんたに会いに来たんだよ」
昔と変わらない、力強い立ち姿。
ぶれない視線。
凛とした物言い。
いま、あたしピンチなのに。
大ピンチなのに。
うっかり、泣いてしまいそうになったよ。
あんまりにも、芽衣子が芽衣子だったから。
「答えろよ」
「昨日、あんなことを言ったのは……」
「言ったのは?」


