悶々としていたら、さっき聞こえたハスキーな女の人の声がしてきて、
あたしは唇をきゅっと結び、耳をそばだてた。
「合格は日下だけか~」
「俺らみんな辻にダメ出しされたぞ」
「マジ? 相変わらず、辻は容赦ねえな」
「うるせーぞ独身男ども! 身だしなみくらいちゃんとしねーと、結婚できねえってわざわざ教えてやってんだろうが!」
やっぱりコレ、芽衣子の声だったんだ。
昔よりも、ちょっとかすれた芽衣子の声に、感動する。
ふふ、相変わらず口悪いなあ。
もう28才になるっていうのにね。
日下先生たちは、慣れてるみたいで皆笑って流してる。
あたしが生きていた時は、わりと芽衣子は周りに怖がられていたけど、もうそういう雰囲気は感じない。
あたしが死んでから、何か変わったんだね。
良い方向に変わったんなら良かった。
芽衣子は特に女子から遠巻きに見られてたから、心配だったんだ。
それにしても。
先生が話してた、服装にうるさいアパレル関係の奴って、もしかして芽衣子のことかな?
芽衣子が、アパレル関係の仕事、かあ。
なんか、想像つかないや。


