「そうですか? まずお飲み物おうかがいしても?」
「えっ! う……と、とりあえず生1つ」
「生ビールですね! かしこまりました、少々お待ちください!」
元気よく、店員さんは去っていく。
その後ろ姿を見送りながら、あたしは軽くパニックだ。
た、頼んでしまった……っ!
外食でお父さんがよくする注文を、セリフもそのままで使っちゃったよ!
うわあうわあ、どうしよう。
これ中学生だってバレたら、あたし捕まっちゃうのかな?
あ、でも飲まなきゃ平気かな?
飲まない、飲まないよ。
あたしは水しか飲みませんよ!
あたしは何を頼もうかと、お品書きを見つめながら、意識はずっと背後へと向かっていた。
意識だけじゃなく、体中の全神経を、後ろの小上がり席に向けてる。
だって、同窓会でなにを話すのか、気になる。
芽衣子の近況とか、話さないかな。
他のメンバーは誰なんだろう。
男女合わせて10人くらいいたみたいだけど。
あ~もう、真後ろじゃなかったら、もっと簡単に盗み見れたのに!


