口元を抑えながら、あたしはイスに座った。
いま、あたしの後ろに芽衣子がいる。
変わってない。
ううん、綺麗になってたけど、大人の女の人になってたけど。
ニッと歯を見せて、顔にシワ作る笑顔は、記憶の中の彼女そのままだった。
元気そうだね。
いま何してるの?
結婚した? 働いてる?
ずっと、ずっとね、気になってたんだ。
あの日の別れ際、あんな風に怒鳴っちゃって、後悔してたんだ。
でも、良かった。
元気そうで良かった。
ひと目見られて、良かったよ、芽衣子。
「お客さま? 大丈夫ですか?」
「あ、す、すみません! 大丈夫です!」
急に後ろから声をかけられて、慌てて背筋をピンと伸ばす。
声をかけてきたのは、さっきの店員さんだった。
そうだった、席に案内されて、そのままだったんだっけ。


