「こちらのお席にどうぞー!」
「ど、どうもっ」
キョロキョロしていたら、いつの間にか店員さんが先に行っていて、カウンター席のイスを引いてくれていた。
緊張しながらそのイスに座ろうとした時、
少しハスキーな女の人の声が、背後から大きく聞こえてきた。
「おし、悪くねーな! 今日の日下は合格!」
日下って、先生!?
振り返ると、後ろの小上がりに、先生の後ろ姿があった。
うっわあ!
こんなに近かったなんて!
慌てて前を向こうとしたあたしの目に、
キラキラした、長い金色の髪が、映った。
あれは、あの金色は…。
日下先生の向かいに座った女の人。
先生が上着を脱ぐのに動いた瞬間、その人の顔が見えた。
声が、出かけた。
彼女の名前を、叫びかけた。
『芽衣子』
あたしの、『柏木リン』の……大切な、親友。


