「いらっしゃいませー!」
「ひゃっ」
入口から数歩進んだところで、女の店員さんが声をかけてきて、飛び上がりそうになった。
でも相手が若くて、年も近く見える女の人で、ちょっとだけほっとする。
居酒屋さんて、こんな若い人も働いてるんだなあ。
「何名様ですか?」
「あっえっと、1人なんですけど……」
「おひとり様ですね! お席はカウンターでよろしいですか?」
「は、はい! どこでも!」
あたしはあっさりと、席へと案内される。
なーんだ、全然バレないじゃん。
変装がんばったかいがあったね。
前世の『柏木リン』だったら、こうはいかなかっただろうなあ。
だって前世のあたし、丸顔で、めちゃくちゃ童顔だったもんね。
『るいち』にもよくバカにされたっけ。
顔が肉まんみたいって。
ほんと失礼なやつ!
せめてあんまんて言ってほしいよね!
思っていたより中は狭くて、レジのあたりから店内が見渡せた。
カウンター席はお客さんがまばらだけど、他のテーブル席なんかは、全部埋まってる。
日下先生は、どこにいるんだろう。


