そんな声が、体の中から溢れ出かけた時、
日下先生の左手薬指に、きらりと光る物を見つけてしまった。
あたしを襲う、2度目の衝撃。
指輪だ。
シンプルな、銀色の指輪。
こんなの、昨日はしてなかった。
してなかったのに。
「それ……」
「ん?」
「結婚指輪……?」
あたしの視線の先に気づいて、日下先生が気まずそうな顔をする。
そんな顔するくらいなら、どうして指輪なんて。
「あー。いや、違う。ただのペアリング」
大きな、ゴツゴツした手をパッと開いて見せてくる先生。
ただの、ペアリング。
ペアリングなんだ。
「噂の、彼女との?」
「小鳥遊も知ってんのか。まあな。あまりにも女子がうるさいから、つけておくことにしたんだよ」
ちょっと疲れたようなその声に、鈍器で頭を殴られたような気がした。


