「……ありがと。日下先生はさ、なんで、教師になろうと思ったの?」
ずっと、たぶん1番、気になってたこと。
だって『るいち』は教師なんてって、どこか先生を冷めた目で見るような奴で。
教師に憧れてたとは、微塵も思えないよ。
それが一体どうして、こうなったのか。
「ははっ。ベタな質問だな。……教師を意識したのは、高校の終わりくらいだったかな。
俺にはもう夢とかなかったから、誰かの夢を引き継ぐのも、悪くないと思ったんだ」
「誰かの、夢……?」
誰かって。
その誰かっていうのは、もしかして。
「昨日話した、幼なじみだよ。そいつの夢を、俺の夢にさせてもらった。そんだけだ。
熱い志を持って教師になったとか、そんなんじゃないんだよ。……がっかりしたか?」
笑いかけられて、笑い返せるはずがなかった。
ただ黙って、あたしは首を振る。
ぎゅっと強く、唇を噛みしめた。
嬉しいのとは、違う。
悲しいのとも、違う。
切ない。
ただただ、切ない。


