「ん? 臭いか?」
「ううん。……けっこう吸うの?」
「いや? そうでもない。1日、半箱くらいか」
「ふうん。……もう、サッカーやらないの?」
昨日話して、気になったことを聞いてみた。
サッカーを辞めた理由も気になるけど、
それよりも、『るいち』がもうサッカーをする気がないのかが、気になって仕方ないんだ。
「やらないな」
日下先生は、きっぱりと言った。
未練なんて、まるでないみたいに。
あんなに打ち込んでいたのに。
あんなに一生懸命だったのに。
あんなに、キラキラ輝いていたのに。
「なんで……?」
「やる意義を見いだせなくなって、もう随分経ったからな。いまさらまた始めようとは、思わねーよ」
「意義……」
「それに、もうオッサンだしな。そんな体力ねぇだろ」
そう冗談っぽく笑う、日下先生。
あたしは笑い返さなかった。


