「降ってきたな」

木原くんが、窓の外を見上げながら呟いた。
文庫本を手にしていた私も携帯をいじっていた陽子も、その言葉につられるように外を見る。


「ホント・・・智也、学校に傘持っててたかしら」

陽子は窓に近づいて、心配そうに言う。
本当に、智也くんが大事なんだなーと心が暖かくなる。


「ね、いつか。アンタは傘持ってきた?」
「あ・・・」


迂闊だった。
今日 雨が降ることは事前に知っていたのに、
朝遅刻しそうだったから傘のことはすっかり忘れて来てしまった。


「アタシの傘入ってく?・・あ、でも確かアタシ達家遠いんだっけ・・」

陽子が色々提案してくれるが、どうやら濡れて帰るしかなさそうだ。
ちょっと憂鬱だな、なんて肩を落としていると、思わぬところから声がかかった。


「・・・俺の傘使うか?」


木原くんが、そう言って傘を渡してくれた。
よく見かけるような、ビニール傘だ。

「いいの、木原くん?」
「ああ、当分ここに居るし、ささ待ってなきゃいけねーから」


でも、それじゃあ木原くんが濡れちゃうんじゃ・・・?

「、俺ここに予備置いてっから心配すんな」
「あ・・・そうなんだ・・じゃあ、借りてくね?」
「おう」

木原くんは、相変わらずぶっきらぼうな言い方だけど、すごく優しい・・・。

「じゃあアタシ、智也が傘持ってったか確認したいから帰るけど・・・いつかは?」
「あ、私も帰るかな・・・木原くん、本当にありがとう!」

傘を少し揺らして、木原くんにお礼を言う。
目が合うと、木原くんは少し笑ってくれた。

「ああ」

やっぱり、木原くんは笑ってるほうがいいな、なんて思ったり。