「なぁ」



思いにふけながら片付けをしていると、後ろから声がかかった。
木原くんの、少しだけ低い声だ。




「え・・・何?」




驚きながら振り向く。
木原くんはいつもの無表情で、私に問いかける。





「朝野って、ささのこと好きなのか?」





意外すぎる言葉に、私は一瞬フリーズしてしまう。
それから数秒して、まぶたをパチパチとさせてから、私はその問いかけにえっ?とだけ答えた。




「・・・悪い。別に、気になっただけなんだが。気に障ったなら、謝る。」
「あっ、い、いやっ!!そんなことないよ。・・・それに、その・・・えと、・・・好き、だよ・・」
「・・・・やっぱり、そうなんだ」



木原くんが、少し杞憂げに言う。




「朝野、・・・あのさ。」
「うん?」



木原くんは、私にきちんと向きなおってから、まじめな顔で言った。




「あいつ、見た目も喋り方もチャラく見えるし、結構テキトーなとこもあるけど、本当はかなり良い奴だからさ。・・・色々、支えてやってくれよ」
「え、・・・・う、うんっ」



私がそう答えると、木原くんは嬉しそうに苦笑する。
そんな彼の顔を見るのは初めてだったので、まじまじと見てしまう。




「・・・何?」




それを不審に思ったのか、不思議そうな顔をする。

「あっ、ううん。・・・木原くんって、そんな顔できるんだなって・・いつもの顔よりそっちのほうが全然いいよ!」
「・・、・・それは、どうも・・・」



少し恥ずかしそうに、彼は俯いてからまた作業に取り掛かる。









なんだか、木原くんとも少し距離が縮まったように思えて、私は嬉しかった。