“いじめ”



そのフレーズに嫌な汗が背中を伝う。



「誰でもよかった。だから、その時のクラスにいた地味で目立たない、大人しそうな奴に目を付けた……。そいつでなきゃいけない理由なんてなかった。ただ、なんとなく気にくわなかった」




翔さんの肩が微かに震えている。



その肩に触れようとしても、私の体は固まってしまったように硬直して動かない。




息を継ぎながら、少しずつ翔さんは話しを続けた。




「初めは物を隠したりだったのが段々エスカレートして、言葉や暴力で傷つけた。何度も何度も……。最後には金を無心した……」




声が震えている。




「あいつは、何度も止めてくれって俺達に頼んだ。だけど、止めなかった、止めてやれなかった……。自分の感情を満たすためにボロボロになるまで傷つけた」




俯いた翔さんの目元に涙が光った。