リタは部屋に戻ると、机の上にある扇と白い表紙の本を持った。


そして、本棚の隙間に白い本を差し込んだ。


こうすることで、東側の飾り棚が右に動き、父親のランディー王の部屋への近道ができるのだ。


これにより、謁見の間への近道もできる。


が、実質、父王の許可なく部屋に入ることになるので、リタは申し訳なく思う。


(まさか、門番や近衛兵も石像に?)


リタは謁見の間まで、走って行った。


案の定、その部屋の前で門番をしているディフレンまで、石像化していた。


一体、誰の仕業だろうかと思いつつ、リタは謁見の間の扉を開ける。


謁見の間の中では、ランディー王が玉座に腰掛けたまま、人間と戦っている。


娘が来ている、と感じたのか、王は人間から視線を逸らした。


「リタ! こっちに来てはならない。早く逃げるのだ!」


王はリタを促す。


「父上、大変です。先程ジオが、その青年の仲間にさらわれました」


彼女の報告を受け、王は少し驚いた。


(何、ジオが? もしかすると、こいつらが国民達を石像にしたのか?)


王が考えていた時、リタが青年の肩を掴み、視線が彼女の方に行くようにした。


「リタ、冷静になりなさい。無茶をしてはならない」


王は娘を叱った。


が、彼女は父王に反発する。


「何を言ってるのですか? 私の乳母が誘拐されたのに、冷静になれませんよ」


娘に意表を突かれ、王はしばらく考える。


(リタ、闇龍との戦いで、少しは大人になったと思ったが……。あれほど何回も、『憎しみを持ってはならん』と言っているだろう)


王が悩んでいる間に、ドスン、という音がした。


リタが青年に押し倒されたのだ。


「いきなり、何を……」


リタがそう言いかけた時、青年は布を彼女の口に当てた。


(息ができない……。まさか、窒息させる気か? それとも、毒殺か? 段々、意識が……)


リタは気を失った。


その隙を見て、青年は彼女を砂属性メダルに封印した。


「リタ!」


ランディー王は、涙を浮かべながら、娘の名前を叫ぶ。