彼はキス以外、何もしなかった。 泣いた理由も聞かなかった。 あたしが落ち着くまで、ただ抱きしめてくれた。 「落ち着いた?」 何分経っただろうか。 彼が、穏やかな声で聞いてきた。 あたしは、答える代わりに頷いた。 結局、思う存分泣いてしまったから、多分目が腫れている。 「もう大丈夫かな?」 彼はそう言って、また頭を優しく撫でた。 その行動に、あたしの心臓は高鳴る。 さっきも同じことをされたのに。