離してもらえると思った瞬間、唇にキスをされた。 静かに、そっと。 触れるだけのキスではなかった。 優しく甘い、痺れるようなキスだった。 あたしはなぜか、突き放すことが出来なかった。 そのうえ、胸を押していた手を、自然と下ろしてしまっていた。 それに気付いた彼は、キスが終わったあと、さっきよりも強く抱きしめた。 彼の腕の中は暖かく、あたしはまた涙が流れた。 何でこんなにも泣きたくなるのか分からなかった。 いけないことをしているのに、あたしは身を委ねていた。