「別に、何でもないですよ」 初対面の人に、それも男性に言うことじゃない。 だから、強がって見せた。 何も気付かず、話題を変えて欲しかった。 だけど、そうもいかない。 自分でも分かっている。 出した声は震えているし、おそらく表情も引きつっている。 誰が見ても、嘘を吐いていると分かってしまう。 案の定、彼にも見抜かれていた。 「何でもないって顔じゃないよね」