彼が持っていたのは、あたしがずっと狙っていたカメラ。 人気で、どこに行っても入荷待ち。 少し値段も高い。 「ねぇ、美羽。 帰ろう?」 何を思ったのか、急に千晃が小声で言って来た。 「どうしたの?」 ちょっとだけ不機嫌そうな千晃の表情が気になった。 「別に、どうもしていないけど。 ただ、帰りたくなった」 どうもしていない様な表情ではなかったけど、あたしは頷くしかなかった。