「俺だって、冷静じゃないよ」 「え……?」 ふと顔を上げようとしたら、頭を掴まれて、加藤くんの胸に押し込まれた。 「ちょっ、何すんの?」 「今、顔上げんな」 「何で?」 そうとう嫌みたいで、押し込まれたあとも頭は掴まれたままだった。 「……俺だって平気じゃないんだよ」 「え?」 その時、初めて気付いた。 押し込まれた胸に耳があたって、加藤くんの鼓動が聞こえる。