「どうせ車で出掛けるんでしょ? そのついでに駅へ寄ってくれてもいいんじゃない? 方向が違うの?」


「方向はほぼ同じなんだけど、駅に行って戻ると約束の時間に遅刻しそうなんだよ」


「戻る? その子の家に先に寄ればいいんじゃないの?」


「いやあ、それはちょっと……」


 金沢と有希を会わせるのにはちょっと、いやかなり抵抗があった。なぜなら、俺と金沢の仲を有希に誤解されるのがイヤだから。

 金沢をアパートに泊めた事は間違いなく有希にばれるわけで、実際には金沢とは何もなかったのだが、有希はそうは思わないだろう。それをわざわざ説明するのもどうかと思うし……


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、

「駅って結構遠いんでしょ? 道知らないし、歩くと気持ち悪くなりそうだから、送ってって」


 そう言った金沢には、歩く気は全くなさそうだった。