「やっぱり嫌いなんだ?」


「違うって……」


「うそ。あんたは私を嫌い、っていうか軽蔑してるんだわ」


「軽蔑? なんで?」


「上司と不倫した、ふしだらで汚らしい女だって、思ってるんでしょ?」


「そんな事、考えた事もねえよ」


 それは本当の事だった。

 前に金沢から不倫の話を聞いた時、そんな実りのない、あるいは実るとしたら、代わりに誰かを不幸にするような恋は止めるべきだと思ったし、金沢にもそう言った。


 しかし、それで金沢が汚らしいとか、ふしだらとは思わなかった。例え相手に妻子がいて、ダメと知りつつも好きになってしまう人の気持ちが、俺にも解るから。経験はないが。


 と考えたところで、俺はやっぱり金沢を恋愛の対象として見てはいないと、改めて納得した。