おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜

「飯? そんな話したっけ?」


「やだー、忘れちゃったの? バレンタインの日に河村君が誘ってくれたんじゃない。でもその日は私が残業だから、週末に行きましょう、って約束したでしょ?」


「あ、そうだっけ?」


 そういう話を金沢としたのは覚えていた。確か、俺がチョコのお礼に彼女を飯に誘ったが、残業があるから今度週末にでも……って話だったと思う。でも、はっきりと約束したわけじゃないと思うんだけどなあ。


「忘れちゃったのならいいわ。じゃあね」


 金沢はそう言って俺に背中を向けた。言い方こそ彼女らしくさっぱりした口調だったが、顔にはしっかりと怒りや失望が表れていた。


「ちょっと待てよ。行くよ」


 俺が慌ててそう声を掛けると、金沢はピタッと足を止め、くるりと振り向いた。