おじさんって言うな! 〜現役JKに恋した三十男の物語〜

「有希、おまえ……」



「わあ、ごめんなさい。あ、そうだ……」


 有希は頬を指で拭うと、慌ててバッグを探り出した。そして何かを掴み出すと、


「はい、コレ返すね」


 と言って俺にそれを突き出した。その有希の白くて細い指で挟まれたものは、アパートの合鍵だった。


「お、おお」


「じゃあ、お幸せにね?」


「おまえも、元気でな?」


 有希はそれには答えず、クルッと背中を向けて駆け出した。

 俺はその後ろ姿を見ていたが、すぐに霞んで見えなくなってしまった。堪えていた涙が、堰を切ったように溢れだしたから。