フジコちゃんは、やらかしてくれるな。

膨大なプリントの量に苦笑しながら、私はさっそくフジコちゃんの汗と涙の結晶であるホチキスの針を取り外しに掛かった。

こういう頭を使わない雑用って、実は割と好きだったりする。

ふんふん、なんて鼻歌を歌いながらホチキスの針を外し終えて、今度はプリントを順番通り並べる。

それにしても、普通なら、全部綴じ終わる前に一度くらい順番を確認するよね。

フジコちゃんのことを思い出し笑いしたとき、教室の扉が開いた。

フジコちゃん早いじゃん、なんて思いながら顔を上げると、立ってたのはクラスメイトの本田くんだった。

「何やってんの?」

「本田くんこそ部活は?」

本田くんは野球部。

さっき窓から眺めたとき、グラウンドに本田くんの姿もあった。

「あぁ、雨が降り出して早上がりになった。
そんで、置き傘を取りに来たところ」

本田くんの言葉に、私は驚いて窓の外を見る。

「本当だ、雨…」

シトシトと弱い雨が降ってる。

しまった。

傘持ってきてないや。

今朝急いでて、天気予報を見るの忘れたんだ。

雨って本当に憂鬱。

プリント作り終わるまでに止んでくれればいいんだけど…。

「で。
渡辺は何やってんの?」

「あぁ、フジコちゃんの雑用」

私は苦笑しながら、さっきのフジコちゃんの武勇伝を本田くんに語ってあげた。

「さすが、ミスおっちょこちょい」

話を聞き終えた本田くんは、そう言って、私が座ってる席の一つ前の椅子に手を掛ける。

そしてそれを私に向けて置き直すと、腰を下ろした。

「え…?」

「手伝う。
二人でやった方が早いだろ」

本田くんはそう言って私の手からホチキスを取り上げた。