君が隣にいれば (短編)

ブルブル…。

私はポケットのケータイの振動で目を覚ました。

あ、アキちゃんからメール。

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件名: 具合どお?

本文: バイトがあるので先に帰ります。
様子見に行けなくてゴメン(>_<)
早く良くなってね。
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ケータイを閉じながら、仮病がばれずに済んだことにホッとする。

もう放課後ってことは、結構寝てたんだ。

あ、雨…。

窓を見ると雨がぱらついている。

そういえばこの間、本田くんと相合い傘して帰ったんだっけ。

今なら舞い上がっちゃいそうなのに、あのときは全く意識してなかったな。

勿体ないことしたかも、なんて考えたところで私はハッとして頭を振る。

まずい、まずい。

本田くんのことはきっぱり忘れるんだってば!

私はパンッと頬を叩いて起き上がると、先生にお礼を言って保健室を出た。

早く帰ろ。

そう思って教室の扉を開くと。

誰もいないと思っていた教室の隅で、窓枠にもたれて外を見ていた本田くんが視線をこっちに向けた。

「本田くん…!」

びっくりしたー!

何でよりによって本田くんがいるの?

「部活は?
また雨で早上がり?」

私が聞くと本田くんは首を横に振る。

「中間試験前の一週間は、活動停止」

そっか。

帰宅部だから知らなかったけど、そういうのがあるんだ。

確かに遅くまで部活やって疲れてちゃ、勉強に身が入らないもんな、なんて納得してると、

「体調は?」

ふいに聞かれて慌てて頷いた。

「もう大丈夫!」

そもそも仮病だったなんて、口が裂けても言えないや。