君が隣にいれば (短編)

「あれって渡辺の妹だろ?
一年で一番かわいいって評判の」

「でも、何で本田?」

晴乃は有名人だし、一方の本田くんも大きくて目立つし。

突如出来上がった意外な組み合わせに、教室の中が一瞬にして騒がしくなる。

そんなこと気にする様子もなく、晴乃と本田くんは廊下で話し始めたようだった。

「晴乃ちゃん、本田と仲良かったっけ?」

アキちゃんに聞かれて私は首を傾げる。

そんなこと…なくも、ない?

「でもさ。
本田って無愛想だけど顔はイイよね」

…うん。

実は私もそう思ってた。

本田くんて、ちょっと怖いけど、きれいな顔してるなぁって。

何だ、アキちゃんもそう思ってたんだ。

私だけじゃないのか。

「結構お似合いかもね、あの二人」

アキちゃんがぽつりと言った。

うーん。
やっぱり苦しい。

胸が、ぎゅうっと掴まれるように。


「アキちゃん…。
何か気持ち悪い…」

私は胸を押さえながら言った。

「えっ!
美雨、大丈夫?」

体調不良なんて訴えたことのない私が突然そんなことを言い出したから、アキちゃんは慌てて私を保健室へ連れて行った。


「熱は…ないようね」

保健の先生は私の渡した体温計を見ながらそう言った。

そうでしょうとも。

だって風邪じゃないもん。

「ま、落ち着くまで寝ていけば?」

先生に言われて私は頷いて、ベッドに横になる。

あーあ。

初めてサボっちゃった…。

目を閉じるとさっきの晴乃と本田くんのツーショットが浮かんでくる。

胸が痛む原因の、おおよその見当はもうついていた。