次の日朝早く起きたにもかかわらず斎藤さんはもう起きていた


「おはようございます…。早いですね、斎藤さん」

昨日本格的に小姓になると宣言したにもかかわらず斎藤さんより早く起きれずがっかりする

「俺も今起きたばかりだ。あんたもいつもよりずいぶん早い起床だな」

“ずいぶん”というところをやたらと強調していってくる斎藤さんに朝から気分が落ちる楠葉だったがなんとか開き直り布団をたたみだす


「な、なにか仕事をください!」


姿勢を正し改めて斎藤さんの前に座った


「そうだな…。では髪を結ってくれ」

「はいっ」


文机の前に座る斎藤さんの後ろに回り髪を束ねる


猫っ毛のせいか、寝癖が所々ついている


寝癖とのしばらくの格闘の末になんとかいつものように髪を結うことができた


「できました」


初めての仕事に喜びを押さえきれない楠葉の声は弾んでいる

「今日は元気だな」


髪を結ってスッキリした斎藤は楠葉の嬉しそうな声に振り返る

「よし、ではこれからこれはあんたの仕事だ。毎朝俺の髪は坂下に結ってもらう」


些細な仕事だったが、なんだかここにいる意味をもらったような気がして楠葉は微笑んだ



「では、俺は朝の稽古にいってくる」

「はい。いってらっしゃい」


ふすまをの前で見送りをすると斎藤さんが振り返った
「こうしてるとまるで夫婦のようだな」


「め、夫婦っ?!」


驚く楠葉をよそに斎藤さんは笑いながら稽古場に行ってしまった



そのあと彼のいない部屋ではうぶな少女が1人斎藤の言葉のせいで悶えていたのであった