楠葉のことを平助から聞いた俺は正直動揺した



気晴らしにと思って町に連れていくことを許可したのを今さらになって悔やんだ

あいつはどんな気持ちで浪士をきったのだろう


これでは黒般若の時の楠葉と同じじゃないか


詰めが甘かった自分に怒りを覚えた


「っで、楠葉は今何をしているんだ」


そう聞いた土方に斎藤が答える


「先程まで泣いていたようなのですが俺にはいつもの調子で大丈夫と言いはって部屋を出ていってしまって…」


斎藤の顔が少し歪む


「そうか…」


部屋に重い空気が流れる


3人ともだまったまま
口を開こうとしない

みなそれほどまでに楠葉を心配していたのだった



前から嘘くさい笑顔を浮かべる彼女を心配していたのだがある日突然ちゃんと笑うようになった


しっかり笑えるじゃねぇか

彼女の笑顔を守っていこうとひそかに思った矢先

今回の町での事件


全然守ってやれてねぇじゃねぇか!


握りしめた拳には自分自身への怒りがにじみ出ている

他の2人を見れば彼らもグッと拳を握りしめ
悔しそうな顔をしていた


そんな彼らを見て土方が口を開く



「出来れば、楠葉にはもう人を斬って欲しくねぇ。だがあいつは吉田を斬るまで本当の楠葉に戻ることはねぇんじゃないかと思う。

そこでだ

吉田を見つけやすいように明日からあいつを見回りに着いていかせるのはどうだろうか?」


「はい、俺も副長の意見に賛同します」


あっさりと賛同した斎藤の隣で平助はまだ悩んでいる

「平助はこの意見は反対か?」


うつ向く平助に尋ねる


「俺は……

俺はもう楠葉に刀を握ら せたくない」


「あぁ、それはわかってるがあいつがいないと吉田を探せねぇだろ?」


「でも…
楠葉が傷つくんだよ」


「しかしこれは坂下が決めることであって「わからないんだよ!」


口を開いた斎藤の言葉は平助の怒鳴り声で遮られる


「土方さん達にはわからないんだよ!

あの時の楠葉がどうなっちゃうか!

わからないんだよ!

浪士を斬った時の楠葉の顔は戸惑いとかなくて
冷たくて…
でも、どこか傷ついていて
あんなに悲しそうな顔

俺は楠葉にさせたくないんだよ


楠葉にはもう幸せになってほしいんだ


だから…
だからっ」


拳を震えさせがら心情を語った平助はまたうつ向く


斎藤と俺も
平助の気持ちを聞いて、考えを思い直すことに決めざるおえなかった


楠葉はこれからどうするのが幸せなのだろうか…?


今まで大変だった彼女に心から幸せになって欲しかった


そのまま解散になり
静かになった部屋で俺は1人思い悩むのであった