漆黒の黒般若

大広間に着くともう宴会は始まってしまっていた


「おせーぞ、坂下。ほらほらこっちこいよ」


そういってあたしの座る場所を確保してくれたのは原田さんだ


幹部以外に女ってことがバレると不味いのでみんなこういった場ではあたしの事を名字で呼んでいた


「すみません…。ちょっと迷っちゃって」

何故か反射的に嘘をついてしまった


芹沢さんとの事を話せば原田さんは…
いや、きっとみんなあたしの事を心配してくれるだろう


ここの人達は優しいから

でも、そんな彼らにあたしのせいで心配をかけたくなかった


うつ向くあたしに原田さんは笑いながら肩を叩いてくる

「ふははっ、落ち込むなって。まだ宴会は始まったばかりだからよ。酒だってまだまだ残ってるぜ」


「いや…、あたしお酒はちょっと…」


「なんだ、飲んだことないのか?今日は宴会なんだ。呑んでみろよ〜っ」

「はっ、原田さん、もう酔ってます…?」


何気にしつこい原田さんにあたふたしてるあたしの腕を誰かが掴んだ

「ほらぁ、佐ノさん。坂下さんが嫌がってるじゃないですかぁ。あんまりしつこいと嫌われちゃいますよぉ?」


そういってあたしを立たせて連れていくのは沖田さんだった

にこにこしながら原田さんのところから連れ出してくれた

「僕の隣においで」


原田さんに別れを告げたあたしはみんなから少し離れて座る沖田さんの隣にいく

「なんかありがとうございました。あたしお酒飲めなくて…」

笑いながらお礼を言うと沖田さんは少し顔を傾けて眉を下げた


「大丈夫だよ。他にもお酒弱い人いるから。ほら、あそこ」


そういって指差す方向には土方さんがムスッとして座っている

お酒が飲めないから騒ぐ隊士達にひたすらガンをとばす土方さんが可笑しくてつい笑ってしまった

「っ楠葉ちゃん?!」

「へ?」

あたしを見る沖田さんの顔はなんだか赤くてとても驚いている

首を傾けてうつ向いてしまった沖田さんを覗きこもうとした楠葉を沖田さんがせいした

「反則だよ…、いきなりなんてさぁ」

訳のわからない事を呟く沖田さんを不思議な目でみていると

「楠葉ちゃん、そんな顔で笑うと可愛すぎて襲っちゃうよ?」

耳元で吐息のような声が聞こえる

きっと今あたしの顔は真っ赤だろう

「しっ、失礼します!」

恥ずかしさに耐えられなくなった楠葉は外へ走っていってしまった

「かわいいなぁ〜」


殺気に満ちた視線に気づきながらも総司は呟いた