漆黒の黒般若

「っん、んん…」


ぼんやりとした視界の中で誰かの顔が目の前に広がる


「おーいっ!気がついたぞ!!」


その男は大声をあげ、あたしが目覚めたことを伝える



途端に遠くからドタドタと足音が響いてきた


「本当か、平助!」

最初に入ってきた筋肉質な男が息を切らせながら入ってくる


するとそれを合図に続々と男達が部屋に入ってくる


体をおこそうにも身体中がだるくて動くことができない



「おい、動くな。お前は熱があるんだ」



動こうとしたことに気がついたのか、すみにいた男があたしに言った


「それにしても、黒般若が女の子だったとは…。しかもこの娘、総司と斎藤を手こずらせたらしいじゃねぇか、お前一体何者なんだ?」



驚きを露にしながら一番背の高い男が聞いてくる



「そうだよ、君が女の子だってわかった時には驚いてつい、隙を作っちゃったけど次は負けないよ」


そう言ったのはあの時、あたしが斬った男だ


「総司、次なんてない。こいつは世間を騒がせた黒般若だ。その事をわかってんのか?こいつの処分も決めなくちゃならねぇ…。」




「おい、少し待て歳。まずはこの娘に誰なのかを聞かないことには処分は決められないだろ?」




つり上がった目のひとは歳と言うらしく、それを優しそうな声でなだめているのはきっと局長の近藤勇だろう


退屈な日本史の授業がこんなところでいかされるとは思わなかった


新撰組とは確か会津に所属する人切り集団のことだろう


十番隊まで結成された組で京の町の見回りなどをしていたと授業で習ったのを思い出した



それにしてもこんな人切り集団のアジトに捕まってしまったあたしは一体どうなるのだろう…


不安ばかりが楠葉の頭をよぎった


「そうですね、近藤さんのいうとおり。とりあえず黒般若君には自分の正体を話してもらいましょう」


めがねをかけた男があたしに自己紹介を促してきた


「はい…、」


ゆっくり体をおこしたあたしは話し出した