漆黒の黒般若

「あたしがここへ来たのは10の時よ………」


楠葉の話を聞いてお信さんは山南さんに怒るようなそぶりを見せた後、少し困った顔をして話始めてくれた


「あたしは元々、5人家族の末っ子だったんだ。貧しい村に生まれたけどみんなで力を合わせて頑張っていこうっていうのが家の家訓みたいなものでね、仲もよくて、親も優しかった」


そう言うお信さんの顔には昔のことを思い出してか、微かに幸せそうな表情が浮かんでいる


聞いているあたしもその頃の様子がなんとなく想像できて自然と口角があがる


しかしすぐにその顔も悲観の色に染まる


「だけど、ある日村を飢饉が襲ったんだ。

飢饉ってのはまぁ、気候の調子とかでちょくちょくくるんだけどその時の飢饉は凄まじい大飢饉だった。


村では毎日食べるものがなくて飢え死んだ村の知り合いがそこら辺にのたれ死んでいて…

仕方なく我が家でも一番上の姉を売ることになったんだよ


泣きながら謝る親にねぇちゃんはただ笑って人売り屋と出ていった


あたしはその時から親のこと恨んでたんじゃないかと思うよ」



自傷の笑みで語るお信さんはひと呼吸おいて、話を続ける


「ねぇちゃんのおかげで少しはましな生活になったあたしたちはなんとか飢饉をのりこえることが出来たの。


苦しかった生活も前よりはよくなってこれからって時、帰ってきたら2番目の姉が居なくなっていた


驚くあたしは彼女を探しにいったんだけど…


もうねぇちゃんはどこにも居なくなっていた


日が暮れて泣きながら家に帰ったあたしは聞いちゃったんだよ


親の話…


あいつらだったんだ…


ねぇちゃんを売ったんだ…


金に目が眩んだ親が金を持ってやって来た人売り屋にねぇちゃんをうったんだ」


それは衝撃的な話だった

震える声でなにかをこらえながら話すお信さんはこんな過去を抱えて生きてきたんだ