「ふたご座、オリオン座、からす座…」



裕との記憶は今でもはっきり覚えている


「こっちの時代も星は変わらないのかな?」



もうすっかり暗くなった夜空には無数の星が広がっている


ビルの明かりもないこの時代で見る星は図鑑で見るのと同じくらいはっきりしていて分かりやすかった



「プラネタリウムみたい」


「いた!探したぞ?」


いきなり声がしてびっくりしながら振り向くと斎藤さんが立っていた


「斎藤さん…」


「全く…、探したぞ。日も落ちて暗いのにこんなところにいたら風邪を引く」


「す、すみません…」


「まぁ、いい。俺もからかって悪かった…。その、なんだ。お前と久々に話したらついつい楽しくなってしまって…」



「え?」


あまりにもらしくない言葉が出てきたため楠葉の頬は一瞬にして染まる


「だから、許してほしい…」

「はい。あたしこそ…、嫌いだなんていっちゃってすみませんでした」


「もう気にするな。それより寒いからどんどん帰ろう」


「そうですね、クシュンッ」



なんだか凄く悪いタイミングでくしゃみが出てしまった


「ほら、こんなところに居るからだ。これでも羽織っていろ」


そう言って羽織をかけてくれる斎藤さんもなんだか寒そうでつい笑みがこぼれる


チラッと斎藤さんを見ると丁度目が合ってしまう


なんだか反らせない雰囲気にのまれ不意にも斎藤さんの顔が近づいてきた


少しドキドキしながらも反射的に目をつむるとしばらくして唇に柔らかい感触が触れた



前のキスと違って触れるだけのものだったけれどとても胸の奥がきゅーっとした


どのくらい触れていたかわからなかったがなんだかとても短く感じて唇が離れた瞬間すこし名残惜しかった


ゆっくりと目を開けようとすると何故か斎藤さんに目を手で隠される


「まだ開けないでくれ。もう一度だ」


そう言われて素直にもう一度目を閉じると今度は唇を舐められる感触がした



しかもなんだか激しい


少し息づかいも荒くなんだか変に思って片目を開けてみると目の前に居たのは斎藤さんではなく



「わんっ!」


犬だった




「にゃはぁあ”ー!」


「わんっ!」