漆黒の黒般若

セミの声で目が覚めた



「ケホッ、ケホッ…、楠葉ちゃん…。お風呂かなぁ…?」




日がのぼるまではいたはずの楠葉ちゃんはいつのまにかいなくなっていた



咳のしすぎで喉はひりひりと痛み、声は少し枯れてしまっていた



起き上がった体をもう一度布団へと寝かせると開いた障子から見える庭を眺めた


このところ部屋から出ていないため目に写る景色は常に同じものだ




暇だな…


今ごろ近藤さん達は戦っているのだろうか



近藤さんの安否と自分が近藤さんを守れないという虚しさになかなか寝付けない



最近楠葉ちゃんがしてくれる話で虚しさなどは紛れていたものの、それは現実に背を向けていただけでただの逃げだということは自分でもよくわかっていた



しかし復帰したいという気持ちに弱った体はなかなか追い付くことが出来ないでいた




細くなった腕と人の役にたてなくなりつつある自分の存在に気が狂いそうだった