突然抱きしめられた楠葉は驚きで固まる



そんな楠葉を抱きしめた斎藤は言葉を続けた



「もう、いいぞ…」



「えっ……?」


なんのことかわからない楠葉は驚きながらも聞き返す


「ここなら隊士達はいない。思う存分泣け…、もう我慢しなくていいぞ」



その言葉を聞いた途端それを待っていたかのように目からは涙が溢れ出す


「えっ。あたし…もう平気なのに…。お梅さんは幸せになったんだから、喜ばなくちゃ…なのに、なんで…涙が止まらない……」



「坂下…」


戸惑う楠葉に斎藤は優しく声をかけてくれた


「泣きたい時は泣いていいんだ」


「ふっ、ぅうぇっ…」


斎藤の声を合図に楠葉は声をあげて泣き出した


お梅と芹沢は死んで、やっと幸せになれた
それはいいことで楠葉にとっても喜ばしいことだ
しかし、もうお梅さんに会えないのは寂しかった
辛かった



そんな我慢してた思いはついに涙となって溢れ出してしまった



「今度一緒に墓参りに行こう」


斎藤は楠葉が泣き終わるまで優しく抱きしめていてくれた


そんな2人の光景は芹沢が泣くお梅を抱きしめているものにほんのり似ていた