近藤さんと土方さんに挨拶して楠葉と斎藤は部屋を出た



「あのっ…ほっぺ…」



急にかけられた小さな楠葉の声に耳をかたむける



「ごめんなさい…。殴っちゃって、ほっぺ痛かったですよね…」



今にも泣き出しそうな楠葉の声は少し涙声だ



「あぁ、痛かった…」


やはりといったかんじで楠葉はうつ向く


「本当にごめんなさい…、まだ痛みますか…?」



「大丈夫だ。しかしあんたの方が痛いだろ?」



「えっ…?」



「あんたがあの人達を殺された心の痛みの方がずっと痛いはずだ、謝らなくてはいけないのはこっちの方だな…、すまなかった。また坂下に大切な人を失わせてしまった…」




「いえ、確かにお梅さんを失ったのは悲しいですけどあの人達は幸せなんだそうです。そんな人達の死を生きてるあたしがいつまでも泣いてたって仕方ないですから…」



そう言った楠葉の顔はすっきりとしていた


「あんたは強いな…」


楠葉は人を失った悲しみを乗りこえて前に進もうとしている


「そんなことないですよ、ここだけの話まだ全然立ち直れてないですから…」


そう言って悲しげに笑う楠葉に近付いた斎藤は彼女を抱きしめた