芹沢はまだ寝ていた
また昨日も飲んだのだろう
部屋には酒の匂いが充満している
「だんなっ、起きてくださいっ。朝ですよ」
どうせ無駄だとわかっていたが体を揺さぶりながら声をかける
しかし芹沢は起きる気配がない
「はぁ〜。朝から来てやったのに本当に不躾な人だよ」
ため息混じりにドタッと畳に腰を置く
仕方がないから少し部屋で待つことにした
芹沢の部屋は意外に綺麗に整頓されていてムダなものが置いてない分広く見える
「おまえ、その痣どうした?」
「え…?」
突然尋ねられたあたしは戸惑う
彼は横になって向こうを向いている状態であたしに話しかける
「あぁ、転んじまってさぁ…。ふふふ、あたしも年かねぇ〜」
なんとか誤魔化す
しかし
「転んだだけでどんだけたくさん痣こさえてんだよ」
あぁ、やっぱり…
この人には敵わない…
「ふふふ、年だからね…」
「旦那か?」
「あんたには関係のないことだよ」
「お前、今日からここ住め」
「無理だね…。あたしはあの人に買われたんだ、逃げ出すことはできないよ」
結局あたしは最初から最後まで井の中の蛙なんだ
好きな奴なんて作るんじゃなかった…
好きな奴と一緒になれないことがこんなに辛くて、こんなに哀しくて、こんなに彼を悲しませるなんて知らなかった…
「本当に……、ごめん」

